命の重さ、21グラム

平和な日々

平和な日々
時は春、日は朝(あした)
朝(あした)は7時
片岡につゆみちて
揚げ雲雀(あげひばり)なのりいで
蝸牛(かたつむり)枝に這い
神、そらに知ろしめす
すべて世は事もなく

「この詩、教科書に出ていたのを覚えている?この上田敏の訳がすごいのよね。原文よりもこの訳がいいからこんなに覚えられるのよね」久しぶりで日本で会った同級生の言葉、クラス会に行く途中での車中での会話だ。

「私達が子供のころには、この詩のような平和な平穏な日々があったのよね。今はどう?毎日戦争や、殺人、交通事故、悪いニュースで取り囲まれていて、これからの子供達の世界が思いやられるわ」

そうだ。この詩のような日々はいつもどってくるのだろう。私が日本に滞在していた12日間、たまたま私が外出した日だけでも2度も列車ダイヤの乱れにでくわした。
みんな人身事故によるものだった。自殺だ。

私が幼いころ、戦後の復興期だったのだと思うが、やはりJR(そのころの国鉄)で鉄道自殺がよくあった。

若者の自殺

こちらでも息子の行っていた高校の校庭の後ろを走るカルトレイン(Cal Train)、サンフランシスコとサンノゼを結ぶ電車に、高校生が飛び込む事件が後を絶たない。今年は2回あった。カルトレインでは校庭の後ろの壁をもっと高くすることを考えているというが、問題はそんなことではない。   

またこの夏、同じ高校出身で大学2年の青年はインターンシップでニューヨークに行っていて、ビルの窓から飛び降り自殺をした。その場合も何が原因だったのか、はっきりしたことはわからない。いつも男子学生だというのも謎である。

今この高校では教師のアンテナを敏感にするように、カウンセラー達が真剣にとりくみだしている。前途有望な青年達がなぜ死を急ぐのか、ひとつにはピア(仲間)からのプレッシャー、また親の過度な期待がプレッシャーになっているのではないかともいわれている。

この高校からは毎年、多数がアイビーリーグや有名大学に行っている。それにしても、残された家族の思いはどんなだろうか。何があろうと、何をしようと、生きていてくれることがどんなに親にとって嬉しいことであるかを、この子供達は知らない。

「When bad things happen to good people」

「When bad things happen to good people」という本を読んでいる。その中に物事を微視的に見ないようにという事が書かれていたが、本当にそうだ。本人にとっては大きな事でも、巨視的に見たら、たいしたことではないことがよくある。親の私達は、命ほど大切なものはない、ということを子供に肝に銘じて教えなければならない。子供達だけではない。この頃、日本では中年層の自殺が多いという。

一方ではこの高校の向かい側にあるスタンフォード大学に、心臓移植のために日本からきて、移植を待っている若い女性や子供さんもいる。

心臓を他の人からもらって、生きたいという多くのウエイティングリストの人達がいるのに、神様からいただいた完全な身体を自ら滅ぼすということが、どんなにもったいないことかを知らせたい。

映画「21グラム」

我が家はエンプティネスト(子供が巣立って空になった家庭)になって私達夫婦は映画三昧の生活を送っている。特に息子が映画製作を専門に勉強しているので、このごろ、製作者の立場から見るようになっている。

数多く見ている映画の中でアカデミー賞受賞監督の「21グラム(日本題―命の重さ21グラム)」は古い映画だが、これは考えさせられる重い映画であった。

交通事故で夫、子供を失った若い未亡人、そのご主人の心臓をもらった大学教授、三人を轢いてしまった、もとアル中でごろつきだったクリスチャンのユースカウンセラー。そのそれぞれ善良な三人が交差して彼ら三様のすさまじい生き方を描いたものだった。

21 Grams Official Trailer #1 – (2003) HD

説明にはこうある。

「人ひとりが生きていくということは他の人との相互関係なしにはありえない。けれど、もし人が生きようとする意欲があるなら、そのサポートはいつも提供されている。恐れようと恐れまいと死は誰にでもやってくる。

人が死ぬ瞬間に失う体重は21グラム。それは数枚の5セント玉の重さ、板チョコ一枚、ハミングバード一羽の重さ、しかし、その重さは、生き残る人によって受け継がれていく」

生かされている私達はこの21グラムを使って生きていくのだ。

ニューヨークにいる息子に電話した。「良い映画を作ることができなくてもがっかりしないでね。We love you だってことを忘れないでね。どんなことがあっても自殺しちゃだめよ」

横で夫が、「やっぱり良い映画を作らなきゃだめだよ」と叫んだ。

竹下弘美

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“命の重さ、21グラム” への2件の返信

  1. 一か所意味の分からない所があります。
    「人が死ぬ瞬間に失う云々から・・この21ℊを使って生きていく」
    どういう意味か知りたいので教えてください。
    お返事待っています。
       ミジンコ

    1. みじんこさま

      命の重さは21グラムです。生きている人はこの21グラムをもっているわけで、それを使っているのです。

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