赤い糸を手繰り寄せ、こんがらがった時には根気よくほどいていく努力  

結婚っていいもの?

七月、忙しい仕事の合間をみて、結婚した友人のAさんの住む伊勢に旅行した時のことです。Aさんは入社して一年目に周囲があっけにとられている中で、四年前からの恋人と結婚したのでした。

あとに残された私達、同期の二人は、結婚などは、はるか遠くのことと思い、あちこちとびまわることの方に夢中といった様子でした。その二人が、Aさんの新妻ぶりをひやかしに行こうとばかりに、彼女の新居を訪ね、その後、ご主人の許可を得てAさんを連れ出し三人で志摩半島巡りをしました。

志摩半島では、随所で、かの有名な海女さんを見ました。ショーとして見せてくれるところさえあったくらいです。すいすいと、白魚よりも美しく、両足をそろえて水中にもぐる彼女達、泳げない私にはまるで水の精のように見えました。

そしてまた、その軽やかで優雅な動きよりも、もっと私の心を揺さぶったのは、彼女達が、命綱を夫に託して水中にもぐると聞いたことです。それは、自分の生命を夫の手の中に託す、すばらしさ、と言えるでしょう。

今までの私であったら、きっと無感動にそれを聞き流したかもしれません。そんな私が、夫にすべてを預ける妻のすばらしさを感じたということは、われながら、驚くべきことでした。この私の変化は、Aさんの幸福な新妻ぶりを見せつけられたせいでしょうか。

世間一般にいう『年ごろ』に反発していた私でしたが、オクテながら、やはり逆らえない『お年ごろ』がいよいよ私にもやってきたようです。

秋風の立つようになった今日もまた、Aさんからおのろけの手紙がきています。

『結婚って、いいものですよ』

これは二十四歳の時、毎日新聞の「女の気持ち」に投稿したもので、私はそのあと半年して結婚に踏み切った。女性の独り立ちを論じ、女性問題研究会に入っていた私としては考えられないことだった。

私なりにこの人になら命綱を託せると言う人が現れたためと信じた結果だった。今から考えると若気の至りとはすばらしい、錯覚だ。

若気の至り

実際二十代の若気の至りで結婚に踏み切らないと、なかなかお相手をみつけるのは難しくなる。たしかにこのごろの女性は、キャリアに生きるようになるから、結婚は二の次になるだろう。

けれど、魅力的な独身女性、男性を見ると、ああ、どなたかお世話したいなと思うようになったのは私達が年をとったからだろうか。お見合い制度というのはやはり、意味のあるものだと思う。今はインターネットがそれに代わってきつつあるが。

これまでに、私達が紹介して、幸福な家族を築いているカップルが二組いる。結婚の意志がありながら、これと思う相手に出会っていなかった人達だ。それぞれが遠くに離れて住んでいたから、私達が紹介しなかったら、いまだにその人達は独身だったかも知れない。だからこの人達には、老後を看てもらえるくらい、恩を着せている。

出会いの紹介所のコマーシャルでまず、「旅行に、一人で行きますか?一人の旅ではつまらないですね。二人で生き(行きではなく)ますか?」というのがある。そう、二人で生きることのすばらしさだ。

それでもその二人の足並が揃わなかったら、これほど不幸なことはない。私の友人達の中でも子供さんを育てあげてから、離婚した人達が少なくとも三組はいる。その女性達は、離婚後、本当に生き生きと輝いている。どんなにそれまでの結婚生活がひどいものであったかを物語っているようだ。

この人とでなければ生きていけない

この人とでなければ、私は生きていけない、あるいはこの人がいなければ私は生きていけない、という信仰に至るくらいの気持ちがなければ、結婚はすべきではないというのが私の持論だ。そして、そのような気持ちになるのはやはり、若いうちではないだろうか。

かつて「タイタニック」や「冬のソナタ」また「世界の中心で愛を叫ぶ」などの純愛物が受けたのは、現在若い人達の中では純粋な愛が失われているからではないだろうか。ちょうどメールで心温まる話が送られてきた。

メールで回って来た話の内容

ある人が汚い財布を拾い、その中に入っていた古めかしい、クチャクチャになった紙切れの手紙を読む。その手紙はなんと1959年の日付けで、

「愛するマイケルへ、母から禁じられてあなたに会うことはもうできないけれど、いつもあなたを愛しています。ハンナ」

という手紙だった。これを読んだ著者はいろいろ手をつくして二人を探し出す。すでにアルツハイマーになっていた二人は驚くことに同じ老人ホームの二階と八階に住んでいた。

彼らは六十年ぶりに再会、二人とも未婚だった。周りの善意の人々に支えられて、七十九歳のマイケルと七十六歳のハンナのまるでティーンエージャーのような初々しい結婚式がおこなわれ、このメールを発信した筆者はベストマンを務めたという。

神様は人間を女と男に造られた。何歳になっても赤い糸で結ばれている相手がいるはず。まだの方はその赤い糸をなんとか、手繰り寄せていただきたい。そして,二人で、幸せに生きてほしい。あっという間の人生だから。

でもその赤い糸がこんがらがってしまったら、それを挟みで切るのではなく、丁寧にほどいていって、地上での生涯を全うしてほしい。

竹下弘美

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