子離れ

子供のために全力を尽くした

外で、ブルージェイが異様なまでの叫び声でさえずり続けている。すると我が家の猫がガレージの中に逃げ込んできた。ブルージェイはその猫の後を執拗に追ってくる。

嘴で猫をつつきかねない勢いだ。たぶん近くに巣があって、卵があるのではないか。母鳥は命がけで子供を守ろうとしている。その母鳥の姿から、私はあのように子供二人を守っただろうか、と自問いしてみる。

ちょうど末っ子である息子がハイスクールを卒業したことから、いままでの母としての役目をブルージェイの姿から、思いおこした次第だ。ふりかえって、その時その時子供のために少なくとも全力を尽くした、と確信できる私は幸せかもしれない。

母の日に息子がくれたカードにはこちらで育った子らしく「これ以上良い育て方は考えられないくらいな良い育て方をしてくれてありがとう」と殺し文句が書かれていた。

息子の卒業式の日は暑かったこともあるが、帰ってきたら今までの十八年間の疲れが出たかのように、早く寝てしまった。学校主催のパーティ(サンフランシスコ湾のクルーズだったそうだ)に行った息子が朝方帰ってきたのも知らずにぐっすりと寝た。

実に卒業式とは親のためにあるのではないかという気がする。娘の方は、上昇志向のある子なので、ほとんど手をかけずに自分でSATの準備なども図書館でこつこつしていたが、弟の方は決して順調ではなかった。生まれる時からして高年齢出産であったため、染色体異常かもしれないと言われた。

結局、私と同じ染色体の並び方だったが、その結果を待つ間はつらかった。また問題をおこして中学の校長先生に呼び出されて平謝りに謝りに行ったこともある。ある私立高校に行きたかったものの、ウエイテイングリストだった本人のために夫と交代でその高校に日参したこともある。

成績のずっと低い子が入っているのにと合点がいかず、彼の書いた新聞記事や作品をもっていって陳情した。結局そこはカトリックの高校でカトリック家庭からしかとらないことがわかり、次には本人が行きたいという公立高校に行けるようにその学校区に引っ越してアパート住まいもした。(アメリカ版孟母三遷参照)

運動神経がよくないのに、がんばって、アイスホッケーのAチームのメンバーに選ばれたため、朝が早いのに夜中のアイスホッケーの練習に嬉々としてつきあっていた夫。

なんと彼のためにいろいろなことをしたことだろう。けれどこのシリーズの二回目に書いたように、彼は自分の足にあった履き心地のよい靴を選んで、つまり自分にぴったりな大学(NYU Tish Dept-ニューヨーク大学、映画制作課)を選んで、八月末にニューヨークに飛び立つことになった。

これも結局、引っ越して入った公立高校で受けることのできた、ビデオ製作の授業とその師に恵まれたことによる大学選択だった。引越しとあの苦労がすべて、彼のこれからの人生を決めるために役だったわけだ。というように、それは今考えると苦労というよりも親の私達にとってブレッシングであった。

前に白人のご夫妻が日本人の子供さんを養女にしていて、「She has been a blessing to us」といっていたことを思いだす。

子供のいなかった私たちにはその言葉はわからないでいた。また、三人の子供を育てていた姉から、「子供を育てるのは大学で哲学を学ぶのよりもすごいことよ」という言葉をきいたりして、そんな世界があるなら、子供をもちたいものだと願っていた。ところが、結婚後十二年たっても子供の生まれる兆しはなかった。

日本から親を必要としている子をアダプトしようと手続きを始めようとしていた時に娘を妊娠し、続いて息子が与えられた。もっと若かったらあと一人をアダプトしたかったが、すでにアダプトできる親としての年齢をすぎてしまってそれは実現できなかった。

子供から受けるブレッシング

先日、感動的な記事を読んだ。コネティカット州の孤児院では毎年一度、孤児たちをアダプトする日があるという。その日、子供たちは着飾って御行儀よくふるまうように教えられ、アダプトされるのを待つ。ある夫婦が女の子の幼児をもらいにいった。

ところが、プールでふるえている十歳の男の子を見て、持ち合わせのミッキーマウスつきのセーターを貸してあげた。帰る時にその夫婦は孤児院の係りの人に「あの私達のセーターを中身つきで、(つまりその男の子ごと)返してください」といったという。

その夫婦ともらわれた男の子の底抜けに幸せそうな写真が載っていた。この三人の写真を見ても子供を育てるということは本当に大変だけれどブレッシングなのだと思う。このブレッシングを十分に味あうことができたことを息子の卒業という機に感謝したが、これからはどうしよう。

もうエンプティネストなのだから、猫を追い払う私達の役目はいらない。果たして子離れができるだろうか。娘の時にはまだ、息子が下にいたからなんということはなかったが、今度は後に残されるのは私達夫婦だけ。なんだか楽しみでもあるし、寂しいような気もする。

食事も二人だったら簡単だし、楽にはなるだろうが。夫婦で遊びまくるお金は私立大学生二人をかかえてはできない。せいぜいサイクリングにでかけるくらいか。

知人は三番目の子供が大学にいってしまった時に犬を飼って愛情のすり替えをして克服した。すでに夫は猫に向かって「You are the best son」などとつぶやいている次第だ。 
 
春先には母鹿と一緒に庭にきていた仔鹿も今日は中鹿に成長して、一匹で、庭のレモンの葉を食べにきていた。母鹿はどこで何をしているのだろう?

人生は後半で決まるという。エムプティネストの前で、ただ呆然としているのではなく、私達も子離れして、これからの人生に賭けよう!!

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