子育ての実(共感)  

成田での待ち合わせ

これもかなり前の話。
それは、息子のLA映画祭でのベストピクチャー受賞短編映画“シフト”を、私の中学高校の同級生が母校で上映してくれる事になっての来日だった。

ちょうど母が孫である息子に会いたがっていたし、テレビコマーシャル制作会社の仕事に就いてから、毎日遅くまで働いていた息子の初めてのバケーションにもなった。

ニューヨークからJALに乗った息子と、サンフランシスコからUALに乗った私が、成田でうまく会えるか心配だった。娘と違って息子は、日本語に堪能ではないし、あまり日本を訪ねた事もない。

旅行会社で、二十分くらいの差でそれぞれが成田に着くようなフライトをアレンジしてくれていたが、ターミナルが違う。少し心配だった。日本を全然知らない外国人だって旅をするのだから、私が案じるのはやはり、息子が末っ子だからだろうか。

日本の友人達は、三ヶ月前からコミッティを編成し、五人で計画を立てていてくれた。場所は、母校の視聴覚教室を無料で使わせてくれるとのこと。時間は、水曜日の十二時。これは、授業の合間を縫って使用させてもらうためだという。

学校の視聴覚技師が、責任を持って映写してくれるという。会費は千円。有料なのは気が引けると思ったら、終わってから持つ茶話会のサンドイッチ代だそうだ。ある友人は、和菓子を作ってくれるというので、私がこちらからオレンジを送る事にした。

二ヶ月前にクラスメイト五十名とそのほか、私の知人を含めて六十名に案内を発送してくれていた。その後、息子への質問の時間があって、最後に私の提案でドアプライズを誰にでも当たるようにした。そのため、私がいろいろな物をこちらから買って行った。息子との楽しい時が持てそうだ。

二十五年前

第一ターミナルから第二ターミナルへの接続バスに乗りながら、二十五年前に、生後八ヶ月の息子と二歳の娘を連れて日本に帰った際のことが思い出された。

まず、離陸して、二時間くらい経った頃に、息子が、隣の人が席に置いていた荷物の上に吐いてしまった。飛行機に酔ったのだろう。あわててそれをきれいにし、謝った。しばらくしたら、娘がオレンジジュースを飲もうとして、コップをひっくり返した。

すっかりこぼして、胸からびしょびしょになった娘を着替えさせてほっとする間もなく、膝の上に抱いていた息子のオムツから、私の白いパンツに何やら黄色い物がはみ出てきた。よほど、飛行機に酔ったのだろう。すごい下痢だ。ちょうど、窓が閉まって暗くなった時間帯だったからよかった。

毛布で下半身を隠し、娘を一人にしておくと不安がるので、娘も連れてあの狭いトイレに直行した。息子のおむつを換え、私もパンツを剥き替えた。幸い着替えを機内に持っていたから救われた。あの狭い所でよくできたと思う。

この事を話すと、よく幼い子供二人を連れて一人で帰ったものだと言われる。きっと子育てで疲れ果て、実家に帰りたい一心だったのだろう。帰りの便は、出張帰りの夫と一緒だったが、助け手がある時には何も起こらなかった。

それから今まで私は何をしたのか。いろいろな仕事にも就いたが、二人の子供を育てた事がメインだったろう。そしてその子供二人は、巣立って行った。

子育ての目的

子育ての目的は何か。最近読んだ「子育て革命」という本の中で著者の品田知美氏は、「最終的に子供が独立した人格として巣立つこと」と言っている。

また、この本の中にわかりやすい図が挙げられている。面白いのでシェアしたい。

図1の「溺愛」は、親の中に子供がいる。これだと親と子の感情の共有はあるけれど、共感がないという。共感とは、親が子供を違う人格として向き合う時にのみ起こる。「溺愛」の場合、自立がない。ここから引きこもりなどが起こるのだろう。

図2は「放任」で、親と子供はばらばらで、人格の分離は成されているけれど、親子の共感がない。そのような子は、大きくなっても友人や恋人と持続関係を保つことが困難となる。

図3は、あるべき親子の関係で、親と子が独立しながら、「共感」の関係を持つ事ができる。

さて、私の心配は無用だった。息子より二十分後に着いた私が、第一ターミナルからバスに乗って第二ターミナルに行った。指示したとおり、第二ターミナルの税関を出た所のベンチに座っている息子を見つけた。

その後の一週間、息子と共にとてもさわやかな毎日を過ごす事ができた。もちろん上映会が開催され、五十名もの友人知人が喜んで迎えてくれた事もあったが、毎日が共感だった。こんなに息子と二人で時間を共有し、共感した事は、小さい時でさえなかったように思う。

息子も同じだったらしく、「初めてこんなに長い間いっしょに過ごす事ができてとても幸せだったし、記念すべき時をありがとう」と、一足先に帰米したニューヨークから、すぐ彼らしく感謝に満ちたお礼のメールが来た。 

竹下弘美

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