夫婦の原点―子供が巣立った後

相手の欠点

子供達が巣立ち、夫婦二人の毎日だ。こうなると今まで子供のことで見えなかった相手の欠点が見えてくる。

多くの友人が、子育てを終えた段階で、離婚している。自分には理解できない相手の行動が欠点として目についてくるからだ。「痘痕もえくぼ」の時期があったとは思えない。

たとえば、我が家の場合はスポーツのテレビ中継がある時は、スポーツファンの夫は熱狂的になって普段以上に何もしない。

アメリカで出版された夫婦生活円満のこつ、が書いてある本には、二人の間のギャップを作らないように、嫌いなスポーツ中継も妻は一緒に見るように、と書いてあるが、私にはこれはとてもできない。

夫は中学時代、勉強は身体に悪いと信じていてスポーツしかしなかった人だ。運動仲間では良い点を採ることは悪いことのようにされていて、及第すれすれの点を採るように努力していたとのこと。

私といえば、運動は苦手。ほかは全部5なのだが、体育だけ、4で、それも実技はだめだから、保健体育の筆記試験でがんばるほかなかった。

ドッジボールなど、怖くて逃げまくっていた。ボールをキャッチしようなどとは思ったこともない。

まるで夫と正反対なのだ。それでも我が子供が競泳やアイスホッケーをしていた時は、彼らの試合は応援したが、それ以外、運動はするのも見るのも趣味ではない。スポーツを観戦することは私にとっては時間の無駄に思えるのだ。

妻の鏡

それでも妻の鏡を自称する私は、ゲームを見ていて、テレビの前に座って動かない夫にトレイに一式載せたお食事を持っていく。朝起きるとそのトレイと、夫の飲んだソフトドリンクの空き缶や瓶コップもそのまま置いてある。

ときには腹がたって自分で片づけさせるようにそのまま置いておくと、いつまでたっても、そのままだから、結局、私が片づけることになる。

それでも夫はこのごろ、子供に少し感化されたのか、いつもの食事時は食べた後の食器をテーブルから台所にもっていくようになったから、前より少しましになった。

なにしろ結婚する時、彼の母から言われた言葉は、

「この子はなかなか食べないから、バナナを食べる時にも剥いてあげてちょうだいな」

であった。そのくらい動かない人なのだ。もちろん義母の言葉には従わなかった。幸い、私達の結婚生活は非常に貧しいスタートだったから、食べられることに感謝して口に入れるようになったからだろう。私がバナナを剥かなくても自分で食べるようになった。

いつの日かマッシュルームを半ポンドではなく一ポンド買えるようになりたいと、いつも躊躇しながら、半ポンドだけ買っていたほど貧しかったからだ。

愛とは

夫が何もしないことについての文句を女友達同士で言い合っていた。夫の悪口を言うということは実に快感だ。ところが、一人の友人は

「私の夫は何も家事をしないし、抜いた物は脱ぎっぱなしで、ズボンは二本の足の形が穴になって残ってまま置いてあるのよ」

と愉しくて仕方がないように言った。

「そして私はその後をついてまわって片づけるの」

どうしてそのように嬉々として言うことができるのかきいたところ、

「私は新婚旅行の時に、結婚指輪をホテルの鏡台で抜いて、それを忘れて置いてきてしまって、そのまま指輪は出てこなかったの。その時、主人はそんな大それたことをした私を許してくれたんですもの。ずっとそのことを恩にきているわけ」

すでに彼女達は結婚してから二十年以上もたっている。新婚でもないのに、彼女の夫への愛に満ちた言葉を皆、呆気にとられて聞いた。

愛とはそういうものかもしれない。相手を変えようとするのではなく、こちらの愛で包むようにするのだ。でもそれも相手次第で、増長する相手もいることだろうが。

海辺の教会でのすばらしい結婚式に出席する機会を与えられた。式の最中、若い二人が一緒に一つの蝋燭に火を灯した。その時、司式をした牧師さんが、二人に言った。

「この蝋燭を持って帰って、来年のこの日にまた二人で灯しなさい。そしてその次の年もまたその次の年も。蝋燭はどんどん短くなっていくでしょう。

なくなったら、箱で買って灯し続けて、二人が老いる日までこの結婚した日を思い出し続けなさい。それから、毎日、今交換した指輪をそれぞれが五分間眺めて、この誓った日のことを想うように」

式場ではこの言葉に感動して、すすり泣きさえ聞こえた。

多くの夫婦がこの原点に戻ることをやっていたら、世の離婚率はずっと下がることだろう。

そして地上での生活が終わる時まで、お互いに結婚した時と同じ気持ちで、相手をおもいやることができ、「もう一度生まれ変わった時にも同じ相手と結婚したいですか」という問いに「はい」と躊躇なく答えられるような結婚生活が全うできたなら幸いである。

今晩も夫はフットボールを夢中で見ている。

竹下弘美

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2 Replies to “夫婦の原点―子供が巣立った後”

  1. 私が弘美さんの旦那様と初めて言葉を交わしたのは、バーベキューパーティーの場でした。
    旦那様はお肉を慣れた手つきで焼かれていたので「まめな方なのだなぁ」という第一印象でしたよ。
    米国ではバーベキューは特別である(男性の役割)事を、あとで知りました。
    毎日、バーベキューならいいですね

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