グッドオールドデイズ(good old days)去り行くアメリカ

久し振りにポリースマンに捕まった

ロサンゼルスに向かうハリウッドフリーウエイの流れはスムーズだった。

午後二時半からのロサンゼルスでの結婚式に十分に間に合いそうだと気分を良くしていた時に、後ろから追いかけて来たバイクがピカピカと光を照らし、短くサイレンを鳴らした。

「あ、ポリースだ」運転していた夫は右に車を寄せた。別のもう一台の車も続いて停まった。

そんなにスピードを出していただろうか。ポリースマンがやって来た。「どのくらいのスピ―ドで走っていたかわかりますか?」夫は「流れに沿って走っていました」と答えた。六十五マイルのところを八十一マイルで走っていたと言う。

バックアップのパトカーが来て、捕まった二台の車の間に入って来た。すぐ「用要らず」と合図され、そのまま走り去った。そうこうしているうちにそのポリースマンは、もう一台の車に「行け」と合図した。

私はかつて日系企業で働いていた時に、日本から赴任して来たばかりの駐在員の方々に自動車のガイダンスをしていた。捕まったら、左の窓を開けて、両手をハンドルの上に置いて素手である事を示す事、などと講義していたが、そんな事はいざとなると忘れてしまう。

その時のポリースマンは、異論があったら、ベンチュラカウンティの裁判所に出廷するように(北カリフォルニアからそのために出廷する事などあり得ないだろう)と、なにしろ、サインするようにと紙を突きつけて来た。これも私がいつも駐在員に講義していた事だ。

サインするという事は、捕まったという事実についてサインする事で、自分の行為がポリースマンの判断と違うと思っても、それは後で申し出る事ができるので、これには文句を言わずにサインするようと教えていた。

フリーウエイに戻って走り出してから、夫は「自分は流れに沿っていただけなのに、あと一台の車はどうして許されたのだろう」と不満げだった。

ウィンクの効用

渡米後一番初めに捕まった時、次のようなエッセイを書いた。
「・・・やっと安い車を買い、走って感じた事は、道の良さはもちろんですが、よくパトカーに会う事です。交番がないかわりに見回っているとも言えるでしょうが、走っていると二十分に一台は捕まっている車に出会います。

もう運転に相当慣れたある日、良い気持ちで街中を走って赤信号で止まった時、後ろからおまわりさんが来るのが、バックミラーに映りました。『さあ、注意しなければ』と、自分に言い聞かせていると、そのバイクは私と並行に走り、私に合図したではありませんか。

右へ行って停まれというのです。私は思い当たることが無きにしもあらず、ドギマギして信号を越してから、道路際に停まりました。早速国際免許証を見せながら、何がいけなかったのかと訊ねました。

案の定、女の人が道路脇に立っていたのに気付かなかったのか、と言うのです。私は気が付いたけれど、彼女は横断しようとしていなかったようだ、と答えました。
『歩行者が歩道から降りている場合には、どんな時でも止まらなければいけない』と、ヘルメットの下から怖い目が私を凝視して言いました。

『ああ、罰金か』と、観念した次の瞬間、彼はにこにこして『この次から注意しなさい』と、あっけにとられていた私を残して走り去りました。次の信号で彼のバイクに追いつき手を振ると、なんと彼は私にウィンクしたのでした。

その後は幸い無事故で運転を楽しんでいます。」毎日新聞 女の気持ちより

二回目

その次に捕まったのは、やはりサンディエゴに住んでいた頃の事だ。夕方遅く車の修理を頼み、そこの車を借り、しばらく走った時に後ろでサイレンが鳴った。何も悪い事をしているわけではないので、走り続けた。パトカーが二台になった。私ではないと思ったが、停まった。

ポリースマンが二人、血相を変えて出て来た。私が逃走したと思ったようだ。理由は、ハイビームで走っていたと言う。まだ渡米して間もなかったので、国際免許証を見せた。修理の間、自分の車の代わりにこれを借りたばかりだと言うと、それでは無理もないと、ウォーニング(警告)だけですぐ許してくれた。

三回目

ロサンゼルス近郊のイングルウッドに移り住んでいた時の事、夫とアイスクリームを食べようと、ダウンタウンで向い側のアイスクリーム店に行こうとしてUターンをしたら、すぐ後ろがパトカーで、止められた。Uターン禁止の場所だったのに、気が付かなかったのだ。運転免提示を求められた。運転していた夫はポケットを探してびっくり。

「出がけにズボンを履き替えたので、置いて来てしまいました」という事は、無免許証運転という違反も犯していたわけだ。歳取ったポリースマンは、助手席の私に向かって、「貴女は運転免許証を携帯していますか?そうだったら、あなたが運転して帰りなさい。今回はウォーニングにしておくけれど、みんながみんな僕みたいなポリースマンではないから、次から気を付けるようにね」

もう四十年以上も前の話だが、かつて自称美しかったという友人は、捕まえられたポリースマンからチケットをもらうどころか、デートに誘われたそうだ。

なんと良き時代だったろう。今は安全運転をするための目的ではなく、罰金稼ぎが見え見えだ。身に覚えがないような小さな事で捕まるのは心外だ。

振り返ると、私達が貧しかった学生時代には、いつも罰金を払わずに済んだ。貧しい生活をしていた時に受けた人々の優しさは、米国という異国の特異な印象だった。でも今は、その貧しい人達、悲しんでいる人達を思いやる米国が霞んで来ているように思える。

あるいは私が歳取ってしまったから、「昔は良かった、今の人達は・・・」と思うのだろうか。

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One Reply to “グッドオールドデイズ(good old days)去り行くアメリカ”

  1. 弘美さん、李先生、
    お帰りなさい!疲れているでしょう。ゆっくり休んで下さい。

    いえいえ、
    弘美さんのコメント私も同感です。歳のせいでは無く、アメリカも確かに昔の「良きアメリカ」が失われつつありますね!
    その点、天国は昔も今も、これからも変わる事なく、素晴らしい所ですね!

織田 恭博 にコメントする コメントをキャンセル

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