花の命

花の役割

私達には十二年もの間子供が授からなかった。そのため、娘が生まれた時は奇跡のようで、あちこちから花が届けられ、病室は花で埋まった。

まるで夢のような祝福そのもののシーンだった。花は神様が創られた物の中で本当に良い役割をしていると思う。

拙書「地に平和」が日本で出版された時にも中学高校時代の同窓生が出版記念会を二日にわたって主催してくれた。二日目には私に花束贈呈があって祝っていただいた実感を味わった。

その直後、帰米してからある日、友人から相談にのってほしいとの電話を受けた。とても深刻そうな声。我が家ではなく、待ち合わせ場所まで迎えにきてくれるという。

そして途中で、「取りにいかなければならないものがあるから、ちょっとYさん宅に寄ってくれる?」と言う。

もちろん同意して、重い物を一緒に運んでほしいという彼女についてYさん宅へ。ドアーを開けるとYさんが出てきて、その後ろに多くの人の影。

「出版おめでとう」と口々に言いながら、黄色のバラを持って飛びだしてきた友人達が、十二、三人。しかもそのバラにはひとつ、ひとつ 小さいカードが添えられて、祝辞が書かれているではないか。

その三日前にもあるご家族を夕食にお招きしたら、「出版おめでとう」と二ダースの色とりどりの見事なバラの花束をもってきてくださった。運悪く熱波の猛暑に襲われた日でその見事なバラも二日で駄目になってしまったが、お花をいただくことはこんなに祝された気分になるものだと実感した。

卒業式のレイ

娘の卒業式に行った時のこと、娘の行ったコーネル大学はニューヨーク州の北のはずれにある。式の後は家路に着くわけで帰りは飛行機だから、割り切ってお花を贈ることもないだろうと思った。ところが、大学近辺の宿泊場が満員のため、二時間ほど離れたところに宿をとった私達に娘から電話があった。

どうしても花のレイが欲しいという。彼女の大学町は小さくて町中の花やさんの花が売り切れてしまいそうだから、私達の泊まっている町で探してほしいというではないか。

すでに金曜日の夜十時過ぎ。卒業式は日曜日だ。泊まった片田舎の町にレイを作ってくれるような大きな花やなどあるだろうか。いずれにせよ、電話帖で、探すことにし、(まだインターネットの時代ではなかった)娘には次の日は土曜だから、レイを注文するのは大変だろうとの旨を話したので、娘も自分で探してみるという。

よく朝、店の開く八時にすぐその町の花やに電話をしてみた。辺鄙なところなのに、私達の出発する十二時までにカーネーションだったら、五十ドルで造ってくれるという。十時ごろ、お店の場所を確認したくて、そのお店を見に行った。

なにしろ、ニューヨーク州の片田舎、尋ね訪ねてその花やを探しあてた。すでにレイはできていた。カーネーションが色とりどりすぎてあまり品はよくないが、時間に間に合わせて作ってくれただけでも感激。

娘に電話をすると、彼女も朝早く起きて、自分の町で蘭のレイをオーダーすることができたという。しかもたった二十五ドルで。もうこちらが用意してあるから、キャンセルしたらと思ったが、お祝いごとだ。レイが二つあっても良いだろう。

行き道の二時間の車中で、花がだめにならないようにジップロックを買い求め、宿でもらった氷でカーネーションのレイを囲った。

ところが、娘は見たとたん、「カーネーションだけはやめてと言えばよかったんだけど」親の苦労も知らず、気に入らない様子。その日、午後五時に娘のオーダーした蘭のレイを取りにいったところ、きれいだが、寂しい。

翌日の卒業式にはカーネーションの方が映えた。二つのレイは二日後には屑箱行きになったが、娘の卒業式を大いに祝い、飾ってくれた。

スイートピー

よく職場の同僚にはご主人から、誕生日などに花が届く。我が夫からは一切花のプレゼントは来なくなった。

昔々、デートしていたころ、何かで喧嘩をした後、私の大好きなスイートピーを冬だというのに、ありとあらゆる東京の花やをかけ売り回って手に入れてくれた夫だ。

その時は感激したが、結婚してから財布は一緒。単身赴任で離ればなれになっていた時、結婚記念日に花を贈ってきたのに、「切り花はもったいないのに」などど、言ってしまった。またあと一度は「一番安いのじゃなかったの?」と嫌味を言ったからそれから、懲り懲りしたようだ。

花の命が亡くなる時

私の花(?)の命が亡くなる時は?私のお葬式にはスイートピーで天国行きを祝ってもらおうと決めているから、春でなかったら、かわいそうに夫はまた駆けずり回ってスイートピーを探さなければならない。その時はまあ、お財布は同じでも夫からの花束を受け取ろう。あれ、この前は夫のほうが先に行くはずだったのでは。

やはり、その苦労をさせたくないから、夫が先に行くのが良いだろう。夫は何の花で囲まれたいだろうか。きいておかなければならない。

竹下弘美

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