高い授業料と時間、能力、青春を賭けて学んだことが生かされるように

ハーバード大学MBA(経営管理学修士)卒業式

何年か前の六月、娘のハーバード大学MBAの卒業式に出席した。卒業式のこの時期になると、そのときの学長のスピーチを思い出す。

卒業式には家族全員、娘の友人までも出席した。カンカン照りの外での卒業式はさぞ暑いだろうと予想して、大急ぎでニューヨークのマンハッタンで帽子を購入したのに、当日のボストンはおもいがけず肌寒い日であった。
 
チャールズ川を隔てて、ハーバード大学の反対側に大学のキャンパスよりもずっとひろびろとしたMBAの校舎が並ぶ。レンガ造りでとても美しい。こんな環境で学べた娘は幸せだ。その構内あちこちに100と書いた旗がなびいていた。その年はハーバード大学MBAが創立されてから100周年になった年だった。

娘はコーネル大学でインターナショナルビジネスを専攻。卒業してから、三年間、働いた。そして上昇志向が大の彼女は、ついに自分の目標であったハーバード大学MBAに入学、卒業することができたのだ。一年五万五千ドルの授業料は自分で三年間貯めたお金と、後はすべてローン。就職してからの返済だ。

一年目はかつて経験したことがない過酷な授業で、試験の結果を知った後、トイレで泣いたこともあったとのこと。でも二年目はすっかり自信がついて、勉強が愉しくなり、最後の六時間に渡る試験の際には、これが最後の試験だと悲しくさえなったという。多くのことを学んだそうだ。多くの師、友人に出会ったという。すべてこれらは将来、彼女の血となり肉となることだろう。

卒業式の日

ハーバード大学MBA(経営管理学修士)卒業式

卒業式当日は、まず十一時半からファミリーランチがあった。姓別でABC順に会場が決められていて、すでに丸テーブルにチキンのランチが並べられていた。一家族に五枚の券が与えられていたから、卒業生九百人を考えると四千五百人分の食事が用意されていたことになる。お昼をそそくさと食べてからライブラリーの前の会場へ向かった。良い席をとるためだ。父兄で混雑している中をかき分け、写真を撮るのにちょうど良い席をみつけた。

式典が始まった。曇り空で今にも雨が降りそうだ。両側には各国の旗がはためき、なるほど、父兄達も白人が大半だが、インド人、ラテン系、アジア系といろいろだ。

学長の祝辞

ハイライトの学長、ドクター・ライトのスピーチはなかなかのものだった。

「まず、皆さん、後ろを振り返ってみてごらんなさい。この方達、家族、友人があなたを支え、あなたに賭けてくれたからこそ、今の皆さんがあり、卒業の日を迎えることができたのですよ」

で始まった。

「・・・人生は自分の思うようにいくとは限りません。予期せぬチャレンジや困難に遭うでしょう。また良い時があり、悪い時もあり、道が曲がっていたり、でこぼこだったりするでしょう。でもその時に忍耐、柔軟性、勇気をもって臨んでください。他の人を信用し、ポジティブにそして臆測することなく、自分で考えて責任をもって対処してみてください。それがリーダーシップです。

百年前にこの学校は世界を変えるリーダーを育てる使命をもって創立されました。百年経った今日、九百人の皆さんを世界に送り出すことができるのを誇りに思います」
このような趣旨のことが話された。

その後、一人一人の名前が呼ばれ、卒業証書が手渡された。多くの男子学生が幼児を抱いて、あるいは手をひいて壇上に上った。年齢的に家族持ちになっている卒業生が多いのだ。企業から送られてきた日本人もチラホラと見え、出身大学はほとんどが、東京大学。この人達はこれからの日本経済を担っていくのだろう。

式の後

あまりの寒さに式が終わるやいなや、まず構内の娘のアパートに帰った。多くの家族が出席していたから、廊下でもかなりすれ違う。一つの部屋のドアが開いていて、父親らしき人の声がきこえてきた。
「ハーバードビジネススクールを卒業したからといって何でも知っているとおもいあがるな」

私も夫も息子さえ苦笑した。本当にそうだ。親は皆そう思っているだろう。MBAプログラムには実務経験者しか入学できないために大学を卒業後、皆社会で働いた経験はある。しかし、彼らは現実の社会をもっともっと知らなければならない。再び、厳しい世の中に出て行って、今度はここで学んだことを実践していかなければならない。

ドクター ・ライトが言った。

「その時にこそ、あなた方が高い授業料と時間、能力、青春を賭けて学んだことが生かされるでしょう。百年間、世界に経済界のリーダーを送り続けてきたこの学校の出身者にふさわしい者として」

竹下弘美

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