アメリカ版孟母三遷

Dangerous Mind という映画

同じシリコンバレーの中でも、学校区によってかなり違う。バスで、イーストパラアルトという全米でも犯罪率の多いことで有名な所から、四つの高校にラテン系や有色人種の子供達が、連れてこられ、地元の白人社会の子供達との対立が激しいという学校区もある。

前に‘Dangerous Mind’ という映画があったが、あの映画はこの中の一つの高校での実際のできごとだ。その映画では、イーストパラアルトから、バスで、連れてこられる、家庭環境の悪い手がつけられない子供達のクラスを、ミシェルファイファー扮する先生が、希望を持たせて、立ち直らせて行く物語だった。

それは麗しい出来事だったが、それはその時であって今でも事態は改善されていない。地元の子供達と、この子達のクラスが一緒になることはほとんどない(成績でクラスが指定されるので、残念なことにこの子達の学業成績は悪いため)のだが、ロッカーでの盗みや車へのバンダリズムの被害を受ける。

実際、小学校、中学校は地元の子供達だけなので、とても良いため、私達も南カリフォルニアから引越してきた時には、学校が良いということで、その地に家を買った。いざ、子供が高校になる時に、悪い評判をきくようになったが、でもどこに行こうと子供次第、と息子はその高校に行くことに決めた。 

始まる前に私も学校の手伝いや集まりなどに行ってみたら、熱心な白人と少数ながら中国人の父兄の姿をみて、安心した。ところが、学校が始まるやいなや、鍵をかけていたにもかかわらず、ロッカーが壊されて、まず、息子はお財布を盗まれた。

息子はお財布を持たずに学校に行くことにした。科学で、DNAの模型を作る宿題が出た。苦心して、会心の作を持っていった。夕方にはそれが壊されて、しかも息子の名前のラベルがはがされ、違う女の子の名前が書かれていた。どういうことかというと、同じ先生の受け持ちの違うクラスのイーストパラアルトの子が、単位だけを欲しさに少し壊して見間違えるようにして、息子の作品を提出したということだ。

科学の先生に訴えたが、その先生も大きな問題としてとりあつかってくれなかった。今度は先生のオフィスに入れておいてもらったにもかかわらずバックパックごと、なくなった。バックパックにはその日やらなければならない宿題が入っているし、教科書もとられたら、弁償しなければならないと息子はパニック状態。私からも学校に届け出をと電話をすると、そんなことは毎日のことらしく、係りの先生曰く、

「金目の物だけなくなるでしょうけれど、明日の朝、ごみ箱を探したらきっとでてきますから。」

という平然とした答え。実際、その翌日、バックパックはプールサイドに放りだしてあった。お財布はもっていなかったから、良いペンだけが、盗まれていた。そのくらいだったら、まだ、我慢できたのだが、先生達の質が良くなかった。惰性で教えていて、良い点はくれるのだが、(それは先生の評判のためだろう。)息子にいわせると、一年間、何も習っていないという。ついに息子はこれから後の三年をその高校ですごすのはいやだと言い出した。とはいえ、良い私立もない。その前の年にその高校の評判が良くないのを知った時、良いとされている学校区のオフィスを訪ねたことがあった。

正規な方法で寄留できないか

なんとか正規な方法で、寄留できないかと、私達の学校区の高校では提供してくれないドイツ語や、ジャーナリズム、ビデオプロダクションの授業を受けたいからと申しでたのだが、事態は厳しく、友人の住所を借りることも許されず、たった一つの方法は、その学校区に引っ越すことだと調べがついていた。

というのは、その学校区に税を納めているかどうかにかかっているということがわかった。こうなったら、引っ越すほかはない。娘は大学にいってしまっているから、親子三人で、ニ寝室のアパート住まいでよいではないかと、急遽アパートを探し、八月の末からの契約をし、その契約書をもって学校区のオフィスをたずね、息子がいきたがっていた高校の許可を得た。一方、持ち家の方は、スタンフォード大学のインターネットにのせてもらって、猫つきで、借りてくれる人を探した。断るのに困るくらいの応募者で、一段落。

良い環境作りを

そんなことまでして、入った今度の高校は聞きしに勝り、先生は抜群。生徒の家庭環境が良いために盗みなど、一つもない。好きなビデオプロダクションやジャーナリズムの科目を取り、新聞部にも入った息子は大満足だ。でも全体の程度が高いので、ついていくのが大変。夜一時すぎまで勉強していて、この何ヶ月間かテレビを見る時間もない息子に

「そんなに大変なら、もとの高校にもどる?」

とからかうと、絶対いやだという。

日本から来た私達には、高校の勉強の手助けなど到底できないが、せめて良い環境作りをしてあげることが親としてできるただ一つの事だろう。

アメリカ版孟母三遷物語である。

竹下弘美

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2 Replies to “アメリカ版孟母三遷”

  1. ガラスの 天井
    オリエンタル?は見えない 天井がある。?
    高校の成績がよく、recommendationもよく、
    でも、身内の学歴 社会の地位 も関係する
    私立大学に入るのには、バックグランド 重要。
    親は、孟母三遷 当たり前の様だ。
    いい、記事でした

  2. 覚えています。その映画!テーマンソングも浮かんできます。しっかし、ひろみさんのこの大奮闘話、実際の学校での出来事にはとてもびっくりしました。 こんなにも環境が違うから、だからこのLAでも学区のいいところのお家賃がぐんと上がるのですね。納得です。でも良いご両親に恵まれ、息子さんもラッキーでしたね。私は、高校、大学と母が私よりも躍起になり、私立を選んでくれたのですが、今となってはとても感謝しています。

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