子育てのグリーンサム(緑の指)は植物と同じ、水を遣り過ぎないこと

預かったプラント

三か月の間日本に一時帰国する友人から、プラントの世話を頼まれた事があった。かなりたくさんの鉢で、立派なアロエ、ちょうど咲き始めたラベンダー、小さく蕾を持った蘭、三ミリくらいの小さな芽が出たばかりのベイズル(バジル)、まだ名前の紙がついているローズマリー、紫蘇などで、気軽に引き受けたものの、責任重大な事に気が付いた。

アロエは見事だが、黒い斑点がずっと付いている。病気かもしれないのでまずカットした。ベイズルは紙コップに植えてあって下に穴がないから根が腐ってしまうだろうと、鉢に移した。蘭だけは我が家でよく育つから、心配いらないと確信。だが、グリーンサムを持ち合わせない私には荷が重過ぎるかなと思いつつ、水さえ遣れば大丈夫と、高を括った。

数日経って朝、外を見て驚いた。紫蘇の葉が、我が家にあった物も含めて皆、首から無くなっていた。鹿の仕業だ。紫蘇だけではなく、咲いていたゼラニュームの花もすっかり無い。サボテンまで土に埋もれている部分を残して食べられていた。

いつも鹿は前庭にはなかなか来ないのだが、よほど、お腹が空いていたのだろう。紫蘇は根が残っていたから、友人夫妻が帰るまでにはまた生える可能性があるが、わざわざ鉢に移したベイズルが死んだ。小さいのに水を遣り過ぎてしまったかららしい。日数が経つにつれてローズマリーも、クシュンとして伸びないし、ラベンダーは雑草のように育つのに、これも鉢だからだろうか、花は一つも付いていなかった。

我が家はリビングルームにサンサンと陽が入るせいか、蘭だけは見事に咲くし、駄目になった蘭も我が家では生き返らせた経験があるから、見事に咲かせてお返しできるだろうと思っていたのに、これも葉が一枚ずつ黄色になって挙句の果てに落ちてしまい、そのうち茎も枯れて来た。どうやら、大事にしようと過保護にして、水を遣り過ぎてしまったらしい。

七月末の彼らの帰国日が近づき、蘭の葉は無くなったが、まだ大丈夫そうだと思っていた矢先、メールが来て、彼らの帰国日が二週間延びたというではないか。その間に蘭は茎まで明らかに死んでしまった。こうなったら、腹を括って買って返す他ない。ベイズルに関しては、会社の友人が自分の家で育てた物をくれるという。大きさからしてちょうど良い。

恐怖の電話

ある日、「昨日帰国しました。今から、預かっていただいたプラントを取りに伺って良いですか?」
という恐怖の電話。私はまだ蘭もベイズルも手配していなかったので、
「今日も明日も都合が悪いので明後日では?」とお願いした。

翌日、友人に会社にベイズルを持って来てもらい、退社後、蘭を買いに行った。果たしてあの蘭が何色の花を付けるのか、それがわからないから、白状するほかない。

翌日、ちょうど良い具合に育ったベイズルをもらい受け、白状せずに何食わぬ顔をしてすべてお返しした。紫蘇は幸い、生きていた。その時、「蘭は入院中ですので、その間この蘭を愛でていてください」とだけ言った。

私のことだから、いずれ、ベイズルの事も白状するに決まっていたが、ご主人に託した事もあってか、彼からは奥さんが喜んでいたと言って来た。でもローズマリーもラベンダーも成績が悪かったから、その後二度と頼まれないだろうと思った。

プラントの水遣り

日系コミュニティーの盆栽クラブの集いに行った事がある。あの方達の技はすごい。平均年齢八十五歳くらいの方達だが、命に関わっているせいだろうか、皆生き生きしている。彼らはその一つひとつの植木に合った水の量と太陽の光を考えて育てているのだろう。私にはその忍耐がなく、せっかくいただいた盆栽をすべて枯らしてしまった苦い経験がある。

また山登りをする友人から面白い話を聞いた。山登りに行くために家を留守にする時には、十分余分に植物に水を遣って行くのが普通だと思っていたが、彼女の説によると、多量に水を遣ることはしない方が良いそうだ。多量の水遣りをすると、植物がまたすぐもらえると期待するから、限界までしか遣らないという。その限界が何日かで、自分の山登りの日数を決めるという。そしてプラントは却って水が欲しいがために、根を張るのだそうだ。

これは全く子育てと同じではないか。愛情をたっぷりかけるのは良いが、過保護にしては駄目にしてしまう。私が預かったプラントを枯らしてしまったのは、皆、水の遣り過ぎからだ。子供も自力で根を張るには過保護にしないことだ。英語で甘やかすことをスポイルと言うが、これは、腐るという意味だ。子供をスポイルしてはならない。

「Born Rich」というドキュメンタリー映画をちらっと見た事がある。富豪の家に生まれた子供達は、生きる目的が無いというものだった。また、素晴らしい青年を子供に持つ友人がそばにいる。どうしてそのような息子さんが育ったかというと、彼女は子供の頃から、息子に責任をすべて任せて、彼は「この父母に頼っては生きていけない」と自分で自分の道を切り開いたのだそうだ。

カリフォルニア州のサリナスの世界有数の栽培者、蘭の帝王、松井氏は違った。彼自身苦労して今の地位を築いたわけだが、得た富で地域の高校に奨学金制度を設け、また、
遺産は会社の従業員に譲渡するそうだ。松井氏曰く、「遺産を子供に残して良い事はない」。 

彼は子供達を温室では育てなかった。子供四人に特別に勉強させたわけではなく、四人とも、花の栽培業を手伝いながらハーバード大学に進学、現在それぞれの分野で活躍している。

「このベイズルはちょっと本数が多いみたいですけど?」とその後、友人から電話があった。白状する前にばれてしまったようだった。

竹下弘美

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