もっとも大切なもの – 共に過ごす時間

Eメールで回ってきた記事

若者のジャックは若者の常であるようにビジョンを追い、仕事に忙しく毎日を過ごしていました。ある日、久しぶりに故郷にいる母から電話がありました。

「ミスター・スミスが昨夜亡くなったのよ。お葬式は水曜日よ」
ジャックの脳裏に彼に遊んでもらった幼いころの日々が、さっとよぎりました。

「行くけど、ミスター・スミスには長く会ってなくて、正直言ってもうとっくの昔に亡くなったとばかり思っていたけど」

「何を言ってるの。彼は会うたびにあなたのことを訊ねていたのよ。そして、あなたと過ごした昔のことをいつも懐かしんでいたわ。あなたのお父さんが亡くなった後、どんなに彼が父親代わりをしていてくれたか、忘れたの?彼は男の子の成長期には男性の影響が必要だからと言って、助けてくれていたのよ」

「彼の住んでいた家、僕好きだったよ。そういえば、大工の仕事を教えてくれたのも彼だし、彼から僕、いろいろ教わったんだよね。彼に会わなかったら、今の仕事に就くこともできなかったかもしれないし。いつも僕といっしょに過ごしてくれていたよね。そう、お葬式に行くよ」

とジャックは電話を切りました。忙しいビジネスの間を縫って、彼は飛行機でミスター・スミスの葬式に間に合うように、故郷に帰りました。

ミスター・スミスには子供もなく、親戚はすでにほとんど亡くなっていたので、葬式は小さな簡素なものでした。帰る前の日、ジャックと母親はかつて、ミスター・スミスが住んでいた家に寄ってみました。瞬間、タイムスリップをしたみたいでした。ドアは開いていて、中に入ると、部屋は彼の思い出通りになっていました。家具も、掛かっている絵も昔のままでした。

ジャックは急に立ち止まりました。

「でもあの箱がない!」

「何の箱?」母が訊きました。

「小さい金色の箱で、ミスター・スミスはいつも鍵をかけて、机の上に置いていたけど、何が入っているかいつ訊いても彼は一番大切にしている物だとしか答えてくれなくって,見せてもくれなかったんだ」

その箱は無くなっていました。ほかの物はすべて、昔のままだというのに。ジャックはきっとミスター・スミスの親戚の誰かが、取って行ったのだろうと思いました。

「これで、あの箱の中に何が入っていたか、ミスター・スミスにとって何が一番大切な物だったのか、もう知ることはできないわけだ」

そして、ジャックは故郷を後にしました。

二週間後のことです。仕事からジャックが帰ってくると、郵便箱に郵便局からの紙切れが入っていました。留守につき、サインが必要な小包なので郵便局に取りに行くようにとの知らせでした。翌朝、郵便局に出向いて小包を受け取りました。

差出人の筆跡はとても読みにくく、ようやく読めた名前にはハロルド・スミスと書かれているではありませんか。ジャックはその場で小包を引き破きました。そこにはあの金の箱と封筒がありました。封筒を開くジャックの手は震えました。

「私が死んだ場合にはこの箱をジャック・ベネットに送ってください。これは私が人生で一番大切で貴重な物と思っていた物です」
と書かれてあって、小さな鍵が添えてありました。ジャックの目は涙で溢れました。さっそく、鍵で小箱を開いてみました。なんと美しい金の懐中時計(ポケットウォッチ)が入っていました。丁寧に蓋を開けると、そこには次の言葉が、彫り込んでありました。

「ジャック、 あなたの時間をありがとう。ハロルド・スミス」

「彼が一番大切に貴重に思っていたものって… 僕の時間だったんだ.」

しばらく時計を見ていた彼はオフィスに電話をし、向こう二日間のアポイントメントをすべてキャンセルしました。

「いったいどうしたのですか?」と彼のアシスタントのジャネットが訊きました。

「息子と過ごす時間が必要だって気がついただけさ」

「そうそう、ジャネット、君の時間をありがとう」

これもメールで友人から回ってきた話である(原文英語)。その最後にはまた、「読んでくれたあなたの時間に感謝します」と書かれていた。

音信不通の友に連絡しよう

私はこれを読んで音信不通になっている二人の友人をぜひとも探そうという気持ちにさせられた。二人ともこのミスター・スミスのように身寄りのないアメリカ人である。彼らが亡くならないうちに探し出さなければ。忙しさにかまけて、探すのを後回しにしていた。二人とも私達家族に時間を使ってくれた大切な友人だ。

そして、訪ねたいといつも思っている伯母がいる。私は幼いころ毎年母の実家で夏休みを過ごしたが、そこで大所帯を切り盛りして何日も食べさせてくれた伯母を思う。彼女もそろそろ九十歳になるだろう。今度こそ、日本に帰ったら訪問しよう。

あの懐かしい甲府に。それまで、彼女が生きていてくれますように。

竹下弘美

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4 Replies to “もっとも大切なもの – 共に過ごす時間”

  1. 昨年、10月15日に投稿された[もう一つの世界]では、少年と電話交換手との交流のエピソードに心が温まりました。
    現実にこんな感動的な事が起こるものなのですね。
    今回は少年と、父親の様に接しくれた男性との話です。
    いずれも大人が単に子供を一時的にあやすのではなく、一人の人間として真摯に向き合ってくれていた事に感動を覚えます。
    子供は激しい時間の流れの中で、忘れてしまっていますが、あるきっかけで鮮明に思い出す。それが今の自分に大きな影響を与えていた事に気づき、感謝する。
    しかしその相手は既にこの世には居ない。

    いつも良いお話しを紹介頂き、ありがとうございます。

  2. また弘美さんの ブログには泣かされてしまいました 、仕方のない事だと思いますが若い人と年配の方のお思う時間の重みには差があり、自分はたいして若くはありませんが
    自分よりも年配の方々との時間も大切に大事に過ごしたいと心から思います

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