でこぼこ道だからこそきこえる澄んだ鈴の音

星野富弘氏

新しい月になって今日も星野富弘氏の詩画カレンダーをめくる。星野富弘氏については日本人で知らない人はいないだろう。ロスでもハワイでもすでに何回も展覧会がおこなわれ、毎回盛況であったという。ロスでは星野富弘氏の愛好会が定期的に集まりをもっているくらい、アメリカでもファンが多い。

彼は群馬県出身の体操の先生であった。跳び箱の授業中、首の骨を折って、首から下がまったく動かなくなった。何もできない、生きている価値がないと思った彼は一時自殺を考えた。けれど、その暗闇の中からクリスチャンとなり、神様に生かされていることに気づいた。口に絵筆をくわえて詩を書き、絵を描きだした。

その題材は花である。始めのころはなかなか大変で、うまくいかなかったようだが、お母さんの、またその後結婚した奥さんの手助けで、素晴らしい味のある詩と絵が多くこの世に出た。今では日本のどの本屋さんでも彼の書いた詩画のはがきやカードを買うことができる。

私は昨年日本に帰国した際、夫と結婚記念日に群馬県の富弘美術館を訪問したくらいのファンである。その渡良瀬川のそばの富弘美術館には交通の不便な片田舎であるにもかかわらず平日千人、週末は三千人の入館者が来るという。彼はまさしく郷里に錦を飾った人である。上半身付随という身体でありながら、人々の魂をうるおしている。

星野氏の作品

どうして、彼の作品が人の心を打つのか、どの作品も素晴らしいがここに何篇か、ご紹介する。

「誰にでもやさしい言葉がかけられそうな気がする。 沈丁花の香り、ただよってくる朝」

「花がきれいですね。誰かがそういってうしろを過ぎて行った。気がつくと目の前に花が咲いていた。私は何を見ていたのだろう。この華やかな春の前で、いったい何を考えていたのだろう。」

「今日も一つ悲しいことがあった。今日もまた一つうれしいことがあった。笑ったり、泣いたり望んだりあきらめたり、にくんだり愛したり、そしてこれらの一つ一つを柔らかく包んでくれた数えきれないほどの沢山の平凡なことがあった。」

「この道は茨の道 しかし茨にもほのかにかおる花が咲く。あの花が好きだから、この道をゆこう。」

「私にできることは小さなこと、でもそれを感謝してできたらきっと大きなことだ。」

「造られたもので、目的のないものはないという 価値のないものもないという。動かない指を見ながら今日はそのことを思っていた。」

彼の詩を読んでいると、五体満足でなぜ悩み、不満をもつことがありえようと思えてくる。このことは「五体不満足」の著者乙武洋匡氏にもいえるが。富弘氏は絵筆を口にくわえるのは日に二時間が限界だという。その中から生まれた詩であり、絵である。身体になんの不自由もない私達はいったい何を見、何を追っているのだろうか?

このごろの日本の言葉で、私の嫌いな言葉がある。「切れる」という言葉だ。昔の堪忍袋の緒が切れるの前半を省略したのであろうが、堪忍袋がついていたころはかなり、耐えていた後切れるわけだが、このごろの「切れる」はすぐに腹がたって爆発することをさすようだ。「切れ」て、人を刺したり、殺したりが日常的になってきている日本で、もっともっと富弘氏や乙武氏のことを紹介して欲しい。

車椅子につけた鈴

富弘さんはある時だれかから、鈴をもらいそれを車椅子につけた。鈴はでこぼこ道にさしかかると良い音を出した。そのチリーンという音は彼の心をとても和やかにしてくれるのだそうだ。

それまで、口で運転する車椅子はでこぼこ道にさしかかると脳味噌までひっくりかえるような振動で、お手上げだったとのこと。けれどそれからは、その鈴の音をききたいがためにでこぼこ道をさけなくなったという。彼は次のように言う。

「人も皆、この鈴のようなものを、心の中に授かっているのではないだろうか。その鈴は、整えられて平らな道を歩いていたのでは鳴ることがなく、人生のでこぼこ道にさしかかった時、揺れて鳴る鈴である。美しく鳴らし続ける人もいるだろうし、閉ざした心の奥に、おさえこんでしまっている人もいるだろう。私の心の中にも小さな鈴があると思う。その鈴が澄んだ音色で、歌い、輝くような毎日がおくれたらと思う。私の行く先にある道のでこぼこを、なるべく迂回せずに進もうと思う。」

でこぼこ道だからこそ聞こえる澄んだ鈴の音。私達もチャレンジしてみよう。富弘氏から、人生を切り開く意欲をもらって。

「白い息よ、おまえに逢える冬の朝はひと息ごとに蒸気機関車のような力が湧いてくる。さあ、古い悩みなんか吐きだし、新しい困難を思いきり燃やし今日という原野を走ろう」

竹下弘美


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