生んでくれてありがとう、と言われたら

立て続けに結婚式が続いた。姪のビーチでの結婚式、友人のクリスチャンの結婚式という具合に、いろいろな結婚式があって、その度に楽しむことができた。

沖縄での甥の結婚式

有終の美を飾ったのは、夫の甥の沖縄での結婚式だった。甥は、兄弟がすべて両親の意向に従って韓国籍の相手と結婚したのに、自分でみつけた沖縄の女性と結婚することにしたということで、声援を送りたかった。いわば私達夫婦の後輩といえる。

彼は次男であったが、父親が医者であることから、初め、医者を目指した。すでに兄は医者の道を歩んでいたので、その必要はなかったのに、暗黙のプレッシャーがあったようだ。二浪した後、あきらめて自分の好きな写真の道に進んだ。それも学校に行ったのではなく、沖縄で師として仰ぐ人に師事した。

決してお金を儲けるような華々しい仕事に就いたわけではない。そして五年の間、沖縄女性の明美さんとの愛を育んだ。なかなか、食べていくだけの生活ができないからと、ゴールインするまでに時間をかけてきた。そして今回、それが実現したのだ。三十五歳になっていた。

招待を受けた私達は、沖縄に行く良いチャンスとばかりに喜んで出席した。それにホテル代は出してくれるという。ドレスコードはアロハシャツ、また披露宴は公園でやるときいて驚いた。あの格式を重んじる両親が承諾するだろうかと、少し心配だった。

式自体は、歴史のある屋敷跡で行われた。二人は沖縄の装束を着て、甥もそれが似合い、沖縄人になりきっていた。ひとつの壷に新郎新婦がお酒を注ぐ。両家がこれでひとつになることを表しているという。

式の後は沖縄料理の昼ご飯が出た。メニューは、ミミガー(豚の耳)、もずく、鯛、炊き込みご飯、豚のお清汁、紅芋のデザート。それから、私たちはマイクロバスで彼らの友人達の待つ公園に誘導された。

そこではすでに舞台ができていて、大きな公民館から借りたテントが四つ張ってあり、椅子、テーブルが並べられていた。テントと舞台の間には、白い大きな無数の紙の鳩がくるくるとまわるようにつけられていた。すべて、友人の手によるものだという。

友人の司会で披露宴が始まった。二人がたった二十万円で買ったというガタガタのフォルクスワーゲンで登場。舞台の横の主賓席に座る。次から次へと友人達のバンド演奏、フラダンス、アフリカダンス、韓国の歌と延々と続いた。合間に、ひとつだけ、父親の友人のお医者さまの挨拶があったが、あとの激励は友達からであった。

高校の時の友人達も東京から駆けつけてくれていた。披露宴での客数は三百人だという。ほとんどが、二十代、三十代の若者達だった。伝統を重んじる両親がどのような反応を示すかと、心配だったが、親掛かりでない、この結婚式にかえって感心していたようだ。

お金で買えない財産

「あの子はお金は持っていないけど、お金で買えない財産をもっているのね」と、姉妹達も尊敬口調で語っていた。

後で聞けば、あまりにも小さい真珠の婚約指輪を見て、甥の母親(夫の姉)がもっと豪華な指輪を贈ろうとしたところ、明美さんは、そうすると甥からもらった真珠の指輪があまりにも見劣りがするからと、受けとらなかったそうだ。

また、ほかの三人の子供達には高級車を買い与えている姉夫婦は、彼にも車をプレゼントしようとしたところ、そんなことをしたら、友人達に変に思われるからと、それも断ったそうだ。この結婚式の費用も親はぜんぜん関与していないという。東京から、親戚を招いた飛行機代とホテル代を全部、彼がまかなったのだという。

途中のお色直しでは明美さんはチョゴリに着替え、二人は傘をさして入場。まるでチャングムの中での王様とお后さまのようであった。その傘も、友人の画家が彼のために染め抜いてくれた作品だという。出されたご馳走は豚の丸焼きのBBQや山羊汁だった。

最後にそれぞれの親御さんに花束が渡された。彼は、

「自分が父を誇りに思うように、大酒飲みだけど、自分もこんな父親をもって幸せだ、と言われるような父親となりたい」

と語り、明美さんは彼の両親に

「チェイホンさんを生んでくださってありがとうございました」と言った。

その晩、花火があがった。私は見るのを逸したが、それは甥が新妻の明美さんのためにあげたものだったそうだ。なんと幸せなカップルだろう。二人の将来は大丈夫だ。文句を言うかなと思った両親も大満足で東京に帰っていった。

「生んでくれてありがとう」と言われたら、それ以上親としては望むことはないではないか。

竹下弘美

にほんブログ村 子育てブログ 子供の教育へ
子育て・子供の教育・ブログランキングに参加しています。よろしければ応援クリックをお願いします。

One Reply to “生んでくれてありがとう、と言われたら”

  1. 微笑ましくもあり、慎ましくもあり、多くの友人に囲まれて、確実にご自分の人生の新たな出発をされたお二人に拍手をおくりたいですね。シェアーしてくださりありがとうございます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA