捕らぬ狸の皮算用

ニューヨークのユースホステル

どこに泊まるかによって旅は愉しくなったり、惨めになったりする。娘の大学、コーネル大学の卒業式で、ニューヨーク州の北の果て、イサカに行くのに、飛行機の切符が高かったので、ボストンまでの安い切符を買った。ボストンには行ったことがなかったので、ボストン見物をかねてそこからレンタカーをしてニューヨーク州まで旅することにした。もちろん、泊まる所を前もって探さなければならない。郊外では行きあたりばったりで、安いモーテルがあるが、大都市では予約をしておかないと不安だ。

先回二度とも、ニューヨーク市内ではひどい目にあっている。それというのも私が予約したホテルが値段のわりには悪かったからだ。それではいっそのこと、物見遊山でアップタウンのファミリーユースホステルはどうだろうかと試してみた。案内の写真ではかなり良さそうだ。

一人25ドル、親子四人で100ドルという安さ。どんなサービスだろう。まず着いたら、ロビーにあふれるばかりの人人…. コンピューターが壊れてチェックインさせてもらえないという。それが夕方の五時ごろで、食事でもしてくる間には直るからといわれ、たくさんの荷物を預け、(これはいつも有料なのだが、無料にしてくれた)

食事にでかけ、七時に戻るとロビーは先ほどよりもまた人数が増え、人いきれで、むんむんしていた。まだ、コンピューターは直っていないという。私をのぞいて夫、娘、息子はあきれてロビーのソファの人の山に隙間をみつけて横たわってしまった。

私は、というと根っからの人好き。そこにいた日本からの旅行者のおばさんや若者達とすっかり愉しいお喋りに興じて、何時間も過ごした。ところが、コンピューターはいっこうに直らず、夫が、コンピューターを頼らずにできないのかと再々催促したが、フロントの応対は「もうすぐ直る」の一点ばりだった。外は小雨の夏。ロビーは冷房も入っていなかったのか、蒸し暑かった。人はふえるばかり。やっと部屋に入れてくれたのが夜中の12時5分過ぎ。 

部屋は広々していて快適で前に泊まったマンハッタンのホテルよりも良かったくらいだが、夜中まで入れなかったことから、その後、家族の私への評価はがた落ち。安いからといってもあんな宿は絶対にとってくれるな、と。

何事も良い方にしかとらない私にとってはそこに泊まったがためにブロードウェイのショウーの情報が入ったり、大好きなジョージガーシュインの生まれた所が見られたりしたと思うのだが、家族は白い目で私を見ていた。

Tおばさんの家

今回もボストン市内はかなり高そうで、一応、案内書を調べて、日本人のやっている宿を見つけた。かなり安い。電話をすると、とても感じのよい女性の応対で、9月11日以降値段を下げているという。ボストン市内から、地下鉄の便もよく、日本のお風呂のある部屋があいているから格安にしてくれるとのこと。それに朝食もつけてくれるということで、半信半疑だったが、今度は私達夫婦二人で、子供連れではないから、もし、変な所だったとしても今回は白い目はふたつだけだ。

Tおばさんの家というその宿はローガン飛行場から、タクシーで15分のブルックラインと呼ばれる地域、ボストン大学に隣接するレンガ造りの三階建てだった。外からはとても古風な作りに見えるが、中は新しく、磨きあげられた板張りの床、大きな窓、また、私達の泊まった部屋には天窓が3つ、日本式の深いお風呂があり、真っ白な寝具が清潔感で、向かえてくれた。疑っていた夫も白い目を向けることができない満足度。

朝、食堂に行って驚いた。その調度品、家具の品の良さ、掛けてある絵の格調の高さ。コーヒーの匂いが漂う中で、一日目はベーガルとオムレツの朝食だった。それもステキな陶器やシルバーウエアのため、高級レストランでの朝食という気分だった。

二日目は日本食。はすのきんぴらに、薄味のこぶの佃煮。案のじょう、これはTおばさんの手作り。お味噌汁がおいしいので、きいてみるとこれも自家製みそ。ご飯の炊き具合も申し分なく、お米自体がおいしく、秘訣をきくとやはり、もち米を一握り入れているとのこと。大きな窓から外を見ながら、ずっとその心地よいダイニングルームで半日過ごしたくなるようなおもてなしだ。Tおばさんの暖かさが伝わってくる。これで前回の宿選択の汚名返上ができた。これなら、いろいろな方に自信をもって紹介できる。特別価格で、105ドルだった。これはかなり昔の話だが、現在でもウエブサイトで調べたら、今でもそれほど値段はあがっていない。

木陰で人がほっとすること

休むという字は木陰で人がほっとすることだと聞いたことがあるが、Tおばさんの家はそのような場を提供してくれるオアシスだった。

そこで私達もリタイア後、このような心温まる民宿をしてもいいなと思わされた。とはいえ、これまでにも私達は、オフィス街でのお弁当の仕出し計画(これは採算があいそうもなく中止)、ドーナッツとかき氷やをやること(これは場所の契約もカウンティへの名前の登録も済ませたくらいまで、具体化した話だったが実現せず)というふうにいつも捕らぬ狸の皮算用ばかりしてきている。 そんな私達にTおばさんの家はまた新たな捕らぬ狸の皮算用の夢をもたせてくれた宿だった。

Tおばさんの家 Tel.617-734-8714
www.tbbboston.com

竹下弘美

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2 Replies to “捕らぬ狸の皮算用”

  1. 私もひどいホテルに泊まったことがあります。
    日本からのお客さんとNew Yorkに行った時。その時に泊まったホテルの酷かったこと。薄暗い部屋でした。バスルームの棚にコップに歯ブラシをさして置くと外れるのです。付け直しても駄目でした。まあ、それは我慢してシャワーを取ろうと栓を捻るとシャワーヘッドがコトンとおちるのです。なんど付け直してもコトン。しかも水しか出ないのです。連れが部屋を変えてもらってと言うので拙い英語で交渉し変えてもらいました。狭い迷路のような廊下を通り辿り着いた部屋が何とまあ、ホコリだらけ。テーブルから棚から真っ白。もの凄い田舎のモテルにも泊ったことがあるけど、あんな酷いモテルはありませんでした。あのホテルは最悪でした。安かろう(安いツアー)悪かろうの典型でした。

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